能力開発

顧客ロイヤルティを高める自動車整備士(メカニック)の能力開発

こんにちは、ツネオキです。

カーディーラーの皆さんの会社では、このような悩みはございませんか?

メカニックの営業マインド不足

顧客ロイヤルティ意識が上がらない

整備技術以外の提供価値を生み出したい

整備の技術については、技術検定や新型車・新技術の講習をメーカー主催で開催されるなど日々高度な技術習得に取り組んでいます。一般の整備工場からするとそれだけでもうらやましいと思うことでしょう。

しかし、何かが物足りない。それが、先ほど挙げた「営業マインド」「顧客ロイヤルティ」「提供価値の創造」ではないでしょうか。本日は、そのような視点から自動車整備士(メカニック)の能力開発についてまとめます。

目次

カーディーラーの近年の取り組み

カーディーラーの収益を支える事業は、点検・整備を担うサービス部門です。国内ディーラーは2009年のリーマンショック以降、新車以外の事業での固定費カバー率向上への取り組みを加速させ、サービス、保険、中古車などのバリューチェーン強化を進めてきました。財務体質と外部環境の変化に強い企業体質作りが永続と顧客創造のために必要となります。

そして、バリューチェーン戦略にはもう一つの狙いがあります。それは、新車販売を安定的に増やしていくことです。新車を購入したユーザーに継続的に自社で乗り換えてもらうことです。そのためには、次の代替え時期まで自社で繰り返しメンテナンス、点検、保険などのサービスでご利用いただくことが重要です。

このバリューチェーンでの中心を担うのがサービス部門です。ディーラー各社はメカニックの採用・教育に力を入れ取り組んでいます。また営業スタッフは点検やメンテナンスパックでの入庫率を目標に掲げ顧客との関係性強化に取り組んでいます。

外部環境の大きな変化

新車の買い方が多岐にわたり世の中に溢れています。新たなライバルの参入です。ディーラーはメーカー車種を独占販売する代理店ですが、市場にはディーラー以外の企業が多く存在してます。

また、2020年5月よりトヨタディーラーでは全販売店が全モデルを取り扱いできるようになりました。トヨタディーラー内の競争が激化するというだけでなく、他メーカーのディーラーにとっても脅威です。隣のトヨタ系列の販売店の店長は、機会ととらえ、これまでアプローチできなかった潜在顧客や過去顧客にも営業活動を強化していきます。

トヨタの車種構成は豊富でラインナップもあらゆるニーズを捉えています。このような店舗が一気に増えるのですから脅威です。当然トヨタ系列同士も競合ですので、2020年は熾烈な生き残りをかけた挑戦の年となるでしょう。

乗り換え需要の機会が眠ったままに

バリューチェーンを形成するディーラーで乗り換え需要を掘り起こせるのはメカニックです。直接お客様に提案するもよし、担当営業と手を取り合ってフォローするのもいいでしょう。サービス部門には多くの機会が眠っています。

しかしこれまでの取り組みの延長線では、思うような相乗効果が生まれていないかもしれません。このまま眠らせておくのは大きな機会損失でもあります。

 

顧客ロイヤルティを高める

ロイヤルティとは、顧客の企業に対する愛着や信頼を指します。これまでの顧客満足(CS)とは何が違うのでしょうか?

顧客満足は、主にその商品やサービス自体を評価する指標として用いられてきました。調査を継続的に実施することで、商品・サービスの改善、改良や新商品の開発に役立てます。

顧客満足度のアンケートを実施し、顧客の声を商品に反映するために商品を改善し充実させていきます。

しかし、「顧客満足」が「商品購入頻度」「顧客一人当たり売上高」に必ずしも反映されないという悩みが多く上がっています。

しかも、顧客の声を反映させすぎることで、商品そのものの使い勝手が悪くなってしまうということもあります。

 

顧客は多くのプロセスを経て、商品を購入します。購入後はアフターフォローやサポートを受け続けます。そして、継続購入や買い替えという行動に移っていきます。

多くのプロセスを通して、商品・サービスを継続的に利用するか、他社へと離脱するかがわかってきたいのです。

商品そのものの魅力と同時にプロセスが重要となります。

顧客がどのプロセスで満足度が高くなり、ロイヤルティが高まるのかを分析することで、次の購入へとつないでいきます。

そして、「顧客ロイヤルティ」こそが「商品購入頻度」や「顧客一人当たり売上高」との相関関係が高いという報告も発表されています。

 

カーディーラーにおいては、より顕著にこの傾向が現れます。

一例ですが、クレーム対応次第でそのお客様がファンになるというのは、「困ったときのスタッフの対応」が顧客ロイヤルティが高まる大きな要素だからです。

アフターメンテナンスをサポートするメカニックの役割と重要性は高まる一方です。

買う時よりも、買った後を大切にすることで、「もう一度あなたから買いたい」につなげる役割を担っています。

 

メカニックは地域に密着した車のドクターを目指そう

カーディーラーでの整備の仕事はある意味で自動的に入ってきます。毎月一定の点検・車検・メンテパックのリストがあります。毎月ゴールの予測は立てやすいです。しかも整備工場と違い、営業スタッフがしっかりしているので、入庫促進に苦労することも少ないでしょう。

一方で、一般の整備工場はどうでしょうか?営業スタッフは数名いれば多いほう。当然自分たちで車検の案内やDM発送などもしている人たちがいます。自ら動いてそのお客様が入庫していただけると嬉しいものです。そのようにして築いた人間関係が強みです。メカニックという肩書があることで、新車の営業をされるというような警戒を持たれずに済みます。お客様としても整備のプロに直接相談できるので頼もしく、安心です。

メカニックとは小さな開業医のドクターのような存在です。お医者さんに直接相談できる安心感こそが、ドクターが提供する価値です。地域を支える手段は医療ですが、提供する価値は「安心感」「信頼」「親しみやすさ」というものです。

手段は整備ですが、地域のお客様に提供している価値は同じようなものではないでしょうか。カーディーラーは企業としては大きいですが、一拠点ずつは地域に根差した車のドクターでありたいですね。

ドクターの仕事で重要なのは問診力

車を運転しているのはお客様です。不具合が出た時の症状はお客様にしかわかりません。故障診断機でフォルトコードや履歴をみても、症状を断定できるとは限りません。

人の病気と同じです。よくある症状と決めつけていたら全然治らない。的外れな治療や投薬をどれだけしても治るわけないですね。その結果、信頼を失い患者は別の病院へ行ってしまいます。メカニックもドクターも問診することが大切です。

いいドクターは問診が上手です。ドキュメンタリー番組などで出てくる名医たちは、徹底して問診します。

徹底的に聴いて患者の言葉を糸口に、病気の根本原因を見つけ出します。ドクターにはドクターらしい、患者とのコミュニケーションがあります。メカニックも自分の強みを生かしたコミュニケーションの取り方があるはずです。

問診では先入観を取り去ることが大切

問診するとき、いきなり症状聞いていませんか?
それでは、真因にたどり着けないかもしれません。

こんな経験ありませんか?

病院へ行ってドクターに、「先生、ちょっと風邪っぽいです」と言って

ドクターから、
「せきは出ますか?」
「鼻水はでますか?」
「のどは痛いですか?」

というような質問をされると思います。

患者は果たしてどれだけ真実の答えをもっているでしょうか。熱などが出ていたら、頭がもうろうとしているので全てなんとなく答えてしまいます。

「少しせきがでます」
「少し鼻水が出ます」
「のども少し痛みます」

なぜこのようになってしまうのでしょうか?
それは、ドクターが風邪だという先入観を持っているからです。
最初から答えが決まっている質問をしても、それは真の問診とは言えません。

メカニックも同じです。お客様の誘導する質問をしないために、先入観を無くしましょう。

 

問診の前に、寄り添う姿勢を忘れずに

ご要望や症状を問診する前に、お客様の困っている、不安な気持ちを和らげる言葉をかけましょう。この人なら安心して任せられると心を開いた状態は、新車の営業とは違いそれほどハードルが高いことではありません。

メカニックが応対するのは既存のお客様が多いですから、一言、二言交わすだけでも随分と違います。点検でもオイル交換でも作業だけでは、顧客ロイヤルティも収益もどちらも上がりません。

そして、困った体験をした時にこそ顧客ロイヤルティは上がります。ですから初期の応対が大切です。最初のコミュニケーションがその後の問診に繋がります。

 

普段から問診する気持ちをもって接する

1か月点検だから、6か月点検だから、特に問題は起こらない。リコールなどを除くと車に異常がみられることは稀です。だから問診はいらないというのは間違いです。

新車を乗って1か月、6か月という時期は、車への愛着も人一倍です。生まれたての赤ちゃんとまではいかないまでも、お客様にとって大切な車です。

新しい車に乗って気持ちも高まっているでしょうから、話したいこともあります。ドライブに行った話や友達との会話など些細なことで構いません。この1か月どう過ごされたかをお伺いしましょう。

購入後のアフタフォローはメンテナンスだけではないのです。自社が提供した車でどんな体験が生まれているか。お客様が話すほど「御社で買って良かった」という気持ちは強固になります。明るい話題を話していると、あなたと過ごす時間も楽しいものになります。

このように、問診は車の不具合を見つけるだけでなく、お客様の心に寄り添ったものでありたいですね。

 

問診はお客様の言葉で会話する

先入観を取り除くことが大切とお伝えしましたが、それは問診の最初の投げかけで決まります。

問診のやり取りの前半は、

メカニックが漠然とした質問を投げかけ、お客様が具体的に答えるという流れがいいでしょう。そして、少しづつ糸口を見つけ、具体的な質問に切り替えていきます。こうすることでお客様の中に、「しっかり私の話を聞いてくれた」という満足感が生まれます。

すぐに車にリフトアップして点検したり、故障診断機で確認するのが悪いわけではありません。メカニックとしての最低限の仕事はそれで充分です。車が故障しているなら、修理して治れば満足だというのも間違いではないですが、車のプロですから治すのは当然のこと。

他社と差別化し、顧客ロイヤルティを高め顧客との関係を強くし、結果として乗り換えの掘り起こしができるメカニックとなるためには、お客様とのコミュニケーションの質がカギを握ります。

 

お客様の話の中から、新たな要望が生まれる

日々の顧客接点の数は、サービス部門が圧倒的に多いです。追加整備などに繋がるキーワードもお客様とのコミュニケーションの中から生まれます。乗り換えのきっかけもサービス部門から出てきてもおかしくありません。

お客様が自家用車の乗り換えを検討する主なタイミングは

・事故(
・キズ・へこみ
・車検
・故障、不具合
・タイヤ消耗
・走行距離が気になり始めた
・燃費が気になる
・ボディーの色褪せ
・新型車の機能に興味を示す
・カーナビが古くなり不便
・家を建てた
・引っ越した
・結婚、出産
・介護
・子供の送り迎え
・趣味ができた
・転勤、転職

乗り換えを検討するタイミングをキャッチして、乗り換えの意向がどのくらいあるかを確認していきます。営業スタッフと連携し、修理の見積をしている時間で話をしてもらうこともできます。営業スタッフとメカニックの二人三脚でお客様をサポートしていきましょう。

 

営業に対する固定観念を打破する

営業とは新車を売ること。というのは間違いではありませんが長年業界に染み付いたイメージが強すぎるように思います。

もう少し大きな枠でとらえると、

営業とは、お客様のニーズをキャッチしお困りごとを解決することで、売上を上げること。

このように定義するといかがでしょうか。

まさに、メカニックの皆さんが毎日している仕事そのものではないでしょうか。全員営業の意識を持つことが強い企業体質につながります。

 

メカニック出身の人材を店長に抜擢する

会社全体でメカニックの意識改革をするのは、店舗数が多い企業では簡単なことではありません。モデル店舗をつくり一点突破で実績をつくり、その後全店へ横展開するのがいいでしょう。

この際、店長を整備士出身の方に抜擢できると取り組みが浸透しやすいですし、会社としても営業体質の変革を社内に打ち出しやすいです。ここで、営業スタッフから不満が出るようなら、その体質こそがメカニックの協力が得られない原因だと認識するべきです。営業スタッフが口にはしなくても、自分たちが上の立場だと思っているということです。

いずれにしても経営幹部としては、店舗のスタッフが一丸となって取り組める環境を作ることが急務です。

目的と目標を明確にし、そこにたどり着ける方法を感情に左右されず、適切に選択することが大切です。

 

乗り換え情報をキャッチしたメカニックを評価する

乗り換えに関してはなかなか案件が上がってこないと嘆く店長や経営者の方も多いのではないでしょうか。メカニックの目線で考えるとどうでしょうか?自分たちは車を整備するのが本業であり、新車の販売まで気に掛けれない。というのが本音ではないでしょうか。

営業部門への新車販売での貢献も、評価される制度があるとやりがいがあります。
営業スタッフの保険付保、車検入庫、メンテナンスパック入庫なども数値管理しているように、メカニックにも数値管理する指標があるといいでしょう。

日々の点検、車検、一般整備に補償修理と仕事は増える一方です。営業スタッフと違い、時間当たりの生産性や修理単価の収益性で評価されていることもあります。それらの成果に直結する仕事に集中したいという声もありますから、強制しては反発を生むだけです。

そして、管理する数値は出来るだけポイントが積み上がりやすい指標にするといいでしょう。乗り換え情報を営業に伝えるだけでも評価する仕組みが大切です。

メカニックの貢献が見える営業工程の見える化

メカニックがせっかく乗り換えや紹介の情報を営業スタッフに渡しても、その後の状況が見えないと取り組みが一時的なブームで終わってしまいます。一過性のものとせず定着させるためには、仕組みが必要です。

乗り換えの商談が進み成約となれば、納車後にはまたサービス部門にお客様が帰ってきます。このように、好循環のスパイラルで売上が上がります。このスパイラルが途切れるのが、他社で乗り換えたタイミングです。

お客様が乗り換えを考えている期間をしっかりと営業管理することが必要です。結局他社で乗り換えたという結果にならないために仕組みが必要です。

すでに、CRMやSFAなどの顧客関係管理や営業管理のツールがあるのなら、ツールを100%活用し情報を分析しフォローすることが大切です。案件をフォローせずに長期化し自然消滅することが無いようにします。そして進捗を出来る限りサービス部門と共有することが大切です。朝礼などで共有するのも一つです。感謝し合う、ありがとうの言葉が飛び交う職場が成果を継続的に上げます。

 

数値管理と行動管理

継続的な活動には、数値管理と行動管理が大切です。

乗り換え情報の営業へのトス件数やその後の成約数だけではありません。

日々の顧客接点をどれだけとるか。そこでどんなアプローチを実施するか。

定量的に計測でき、行動レベルはより細かく設定することが必要です。

趣味もダイエットもビジネスも同じです。

ピアノが弾きたいのなら、なりたい姿から逆算して細かく目標設定します。そして達成するための行動を日々管理していきます。

ダイエットなら10kg痩せると掲げるだけではリバウンドしてしまいます。10kg痩せたその先の未来のイメージから逆算し、日々の体重管理と行動管理をします。

ビジネスも同じように取り組むことで成果を掴み、継続する体質が身に付きます。

 

いかがでしたでしょうか?サービス部門での顧客体験を強みに育てられれば、顧客ロイヤルティが高まります。自社で継続的に乗り換えていただくためには、メカニックの皆さんの協力無くして実現しないでしょう。ぜひ他社に先駆け人材育成を強化していきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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