こんにちは、ツネオキです。
自動車整備工場の改善ポイント第3回は、顧客満足と収益が上がる修理見積りの提案方法です。
前回は、点検項目の細分化と収益アップでした。点検項目を一つずつ抜け漏れの内容にし、整備士同士での点検品質のバラツキを無くすというのがテーマでした。
今回は、その点検で見つかった故障に対して、お客様に見積もりを提示する際のコツをお伝えします。
YESかNOかという選択をさける
修理の提案時に、1つの提案しかないとお客様に決断を迫るような雰囲気になりやすい。お客様にとって負担にならない金額であれば大きな問題にはならないが、安いか高いかは人によってバラバラです。
営業トークの「YESをもらう質問」というものに近いです。
「お飲み物はいかがですか?」と質問すると、
「いいえ、結構です」と答える可能性があります。
「コーヒーか紅茶どちらにしますか?」であれば選んでいただき易くなります。
お客様に「修理するのか、しないのか」と詰め寄っている気はなくても、金額的に悩むと決断に二の足を生みます。
自社の工場で直さないなら、そのまま乗り続けるか別の工場に行きます。当然ですが、他社の工場で親切な対応でそのまま乗換えということも起ります。
ここでお伝えする改善ポイントは、単なる受注するためという目的だけではなく、お客様のカーライフにどれだけ寄り添えるか、結果として自社を継続してご利用いただくお客様をどれだけ増やせるかを考えていきます。
自社の収益ばかりに目が行ってしまっては、お客様との関係性が気づけません。
お客様も修理の必要性は十分理解しています。でもご家庭のご事情などで出費を極力抑えたいという方は少なくありません。
お客様の経済的悩みは、
今年は家族の車の車検が重なっていて・・・
子供の入学、進学で出費が多くて・・・
自宅をリフォームしたばかり・・・
つい最近事故で修理したばかりなのに・・・
こんな悩みも聴くことが出来れば、一緒に解決する方法を考えるというポジションで親身な提案も可能です。
急がば回れで、丁寧にお客様との関係性を気づき上げていきましょう。
収益改善はあくまでも結果として得られるもの。常にお客様に寄り添った修理見積りを考えていきましょう。
選択権をお客様に提示する
医療の現場でも患者に対して治療方針を複数提案することがあります。
治療プランそれぞれのメリット・デメリットが説明されます。年齢、体力、ご本人とご家族のご意向を伺いながら、一緒に決めていきます。
ですから、我々もドクターのように、お客様と共に解決するという姿勢が大切です。具体的に見ていきましょう。
整備内容・部品別の修理見積の提案事例
タイヤ交換の見積り
車の状態:フロントタイヤ2.5mm リアタイヤ4.0mm
提案の可能性は、
フロントタイヤ2本交換
4本セット交換
タイヤローテーション
の3択が考えられます。
この時、目先の売上を追いすぎて、4本セット販売していませんか?
間違いではないですが、一方でこういう考え方もできます。
前回のタイヤ交換から2年ほどで、走行距離が多いなら、少しでもタイヤを使い切りたいです。当然安全面は考慮したアドバイスは前提です。
タイヤローテーションと4本セット交換(又は2本交換)の見積を提案をする。
結果として、タイヤローテーションになってもいいのです。
なぜか?
そのままタイヤ交換の必要性は残っています。
そして、半年後に交換してもらうことも可能です。
大切なのは、「ここで逃したら、他社に行かれてしまう」という強迫観念です。そういう気持ちから提案すると押し売りになります。
どうしても4本セットで販売したい場合は、「今買う理由」をつくってあげればいいのです。
車検とセットで割引などです。
そうすれば、「損したくない」という意識がありますから、選択権はお客様に渡したまま、ご自分でタイヤ交換を選択しやすくなります。
多額の広告宣伝を売っている大手なら、押し売りで嫌われても、次のお客様に目を向けます。
地域に密着した整備工場で同じ応対では、自社を利用する理由がなくなってしまいます。何でも気軽に親身になって相談してくれる。そういう関係性を築くことが大切です。
純正新品パーツ以外の選択肢を提案する
年式が新しい車であれば、新品の部品で交換してほしいと思いますが、年数が8,9年と経ってくると車の年齢に合わした修理でもいいというお客様は多いです。
区部 | メリット | デメリット |
純正新品パーツ | メーカー純正の信頼、安心 | 価格が高い |
純正相当品 | 品質的にも問題なし、純正品より安い | 取付部の仕様変更などで組み付かないケース(稀) |
リビルト品 | 純正新品と比べ大幅に安い、中古品より安心で保証もある | リビルトメーカーによるバラつき |
中古品 | 一番安い | 壊れないという保証がない |
部品をいろいろなパターンに分けて修理見積りするのは手間がかかります。
でもその手間は整備工場が、お客様の代わりに請け負う手間です。お客様が別の整備工場へ相見積もりや相談に行く手間を、自社で代わりにして差し上げるということです。
お客様にメリット、デメリットをお伝えして選択を委ねると、
「あなたならどっちがいと思う?」という風な質問が返ってくることも多いでしょう。
お客様に寄り添い、家族や友人に相談するような関係性になってくれば、
他社の整備工場に行こうという気持ちは減っていきますね。
最後に、
決して「いい人」になることが目的ではありません。しっかり収益を上げられる工場になっていただくのが目的です。
とかく業務改善というと、効率化や時間短縮などに目が行ってしまいます。
整備工場の中だけの問題は、それでもいいでしょう。
しかし、お客様あっての仕事です。
そんな視点でとらえて頂ければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました。